『天界の花』














秋といえば、赤がよく目につく季節だ。
木々の葉は色づき、夕焼け空も燃え尽きてゆくかのように彩られる。
風が秋の気配を濃くし始めた頃、大地を朱赤に染める花がある。
曼珠沙華……彼岸花。
美しい花にはとよく言われるように、全草に毒を持つ植物だ。
昔は、その毒で墓地や田畑を守ったものらしい。
人々の身近に在った花には、たくさんの別名がある。
その一つが、『天界の花』。
仏教の教えからきているものらしく、日本ではあまりみかけない白い花を指しているものらしい。
多摩川の川原で、所々に群生している彼岸花を一望する。
近くの一株が、まだ蕾ではあるが白い花のようだ。
朱赤の道着姿と、純白の神甲冑を纏った姿の親友を想起する。
彼岸花の花言葉は、花の色によって少し異なるらしい。
赤は、情熱、悲しい思い出、再会。
白は、思うのはあなた一人。
なんだか、自分たちのことのようだと凱は苦笑する。
今、天空界で孤軍奮闘しているだろう親友を想う。
いつになるか分からないけれど、どんな形であろうと僕たちはまた出逢うのだ。
言葉にしなくとも、二人の間には再会の約束がある。
今のままでは、二人が一人にならないと完全な創造神の後継者にはなれないらしい。
そこを、二人のままでいられるようにと道を探っている所だ。
凱の姉が起こした騒ぎがなくとも、二人が一人になってしまえば、
共には在れるが、悲しいときも寂しいときも抱きしめることができない。
苦しむ親友を、そのまま独りにできるはずがないのだから。






>Post Script
>少し前に行って来た彼岸花の群生地ネタの人間界話。。
>場所は、埼玉県「日高市」巾着田の曼珠沙華公園。


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