『恵みの季節』














しとしとと、雨が降る。
命を潤す、恵みの雨。
そんな季節に、彼は生まれた。
自然は時に凶暴な面を垣間見せ、恵みの筈の雨でたくさんの命を奪ってもいく。
人間が御せない大きな力だ。
凱と夜叉王ガイのように。
まるで二人のような彼らは、一人である。
魂は一つ。
分けようもない、同じ存在だ。

実りの秋とはいうもので、様々なものが、秋に実を結ぶ。
収穫の季節。
そんな時期に彼は生まれた。
厳しい冬を目前にした時期に。
秋亜人と修羅王シュラト。
その二人を分けて考える者はほとんどいない。
言動もさして変わらなければ、根っこにあたる魂も同じ。
創造神の後継者と呼ばれる時だけ、もうちょっとなんとかならないのかとか、成長しろとせっつかれる。
神の後継者としての責任だけ増やされても、彼の基本は人であった。
皆と変わらない人でしかなかった。
だから、人間界の故国が雨に覆われる季節、一日だけ一人で過ごすことにしている。
親友が、魂の片割れともいうべき彼が生まれた日を祝うために。
夜叉王に選ばれたのが凱でなかったとしたら、今の天空界は残っていなかったろう。
凱は優しく、詰めが甘いところがあった。
そして、秋亜人との戦いに他人が割り込むことを良しとしなかった。
だからこそ、先の大戦で圧倒的に不利な状況から秋亜人らは辛くも勝利をもぎ取った。
魂まで天空界と人間界に分けられてしまった親友を、一日でも早く戻したい。
秋亜人は、毎年この日が来る度に約束を確認するのだった。

<End>



>Post Script
>前回、秋亜人の誕生日に更新できなかったので、今回二人分。
>下手な鉛筆画は描いてたのだけど、精神状態悪いときだったから、まったく笑顔にならなくて。
>今回は文字で小話。


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