『どんなに変わっても、それだけは変わらない日』
辺りが薄暗くなり始めている。
見上げた空に、瞬き始める星。
天空界の空は、彼が生まれ育った所とは似ているようで似つかない。
肉体を失った彼は、親友の内に存在していた。
実体を持って向き合うことはできなくなったが、こうして親友の目を通して同じものを見ることができる。
見える星の数が、東京とは圧倒的に違う。
そして、星座をはっきりと覚えていたわけではないが、配置が全く違うのだ。
人間界では、かつて天動説と地動説で争っていたというが、それは宗教と科学の戦いだったのかもしれない。
様々な観測結果の積み上げにより、現在では地動説が正しいとされている。
地球は丸く、球体だから地の果てという線引きは存在しない。
だが、天空界には果てがあるらしい。
人間界とは、世界の構造そのものが異なっているのだろう。
もしかしたら、ここの大地は平らなのかもしれない。
太陽や月、そして星の方が動いているのかもしれない。
そんな二つの世界には、どういったわけか不思議な繋がりがある。
片方が戦乱などで乱れると、もう一方にも影響が出るという。
不思議なものだ。
世界の在り方も、時間の流れる速度も異なるというのに。
そこまで考え、彼はようやく現状に気付いた。
いつの間にか、視界は柔らかな闇に包まれている。
それは、親友が目を閉じたからだ。
星を眺めているうちに、眠くなったのだろう。
天空界には、東京のようなはっきりとした四季はなく、薄着の野外で眠っても大して支障はない。
シュラトは気付いていないようだが、転生した日から数えると今日は二十八回目の誕生日。
異なる時の流れにある人間界では、同じ十月十日でないかもしれない。
それでも、彼にとっては今日が親友の生まれた日であり、特別な記念日だということに違いはない。
声のない声で、おめでとうと囁く。
直接耳に届くことはないけれど、生まれてきてくれた感謝の気持ちが伝わってくれるようにと。
<End>
>Post Script
>秋亜人の誕生日祝いの小話です。
>近頃、星がらみのグッズとかにハマっているので星ネタから。
>天空界の一万年前の戦いの頃、人間界にデーヴァ神軍対アスラ神軍に匹敵する大きな争いというかそもそも大きな組織が存在していたのかってのが前から疑問で……
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