『強さの計り方?』














道場でイメージトレーニングをしていると、傍に立つ気配がある。
よく馴染んだそれに、凱は無意識で張り巡らせた警戒を解く。
すると、背の向こうに体を横たえたようだった。
また、居眠りをして師匠に怒られねばいいのだが。
だが、今日は寝息に変わる間もなかった。
「何をしてるんだ、秋亜人……」
「何って、見りゃ分かるだろう?」
目を開けて視線を向ければ、覆いかぶさり体重をかけてくる親友と目が合った。
瞑想に飽きたのか。
体を動かしたくてじっとしていられないのか。
「重いって。」
背は凱の方が高いものの、体重は秋亜人の方がある。
「重くなったか? それなら、修行の成果が出てるんだろ。」
なんでそうなる……
首を傾げた気配を感じてか、やや不満そうに口を尖らせたようだ。
だが、すぐににやりと不敵そうな笑みを浮かべたに違いない。
「筋肉が増えた重さだからな。」
そう告げてくる声音は、とても誇らしげだった。
強くなっているのだと言いたいのだろう。
ただし、それは背が伸びていないという前提である。
成長期は終わったのかと問いかけたくなったが、凱に親友の機嫌を損ねる気はない。
そうは言うものの、口許に浮かぶ微笑みまでは隠しきれなかった。
秋亜人が体重をかけたまま言い募る。
今日からしばらく年上になるからって、一人で大人ぶるなと。
そういえば、今日が己の誕生日だったと思い至る。
何にも代え難いこの親友と同じ時、同じ場所で居られることが嬉しい。
「ありがとう。」
こうしてともに居てくれることに感謝し、これからもともに在り続けることを願う。






<End>



>Post Script
>凱の誕生日祝いの小話です。
>最初、もっとシリアスしっとり甘々だったプロットが、いつのまにかこんなあっさりさっぱり短くなって……
>先代転生ネタ+34話だとあまりハピバッぽくないかと思って方向性変えて、原型の方が絶対的に甘かったかと少し後悔。


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